Dr. Shriji Kurup Centre for Environment Education (CEE)

皆さま、こんにちは。インドから参加し、このブルーフラッグ初のアジアサミットという歴史的な機会を皆さまと共有できることを、大変光栄に思います。
私は環境教育センター(CEE)に所属し、インドにおけるブルーフラッグのナショナルオペレーターを務めています。CEEは1984年にインド政府環境・森林・気候変動省によって設立され、「持続可能な開発のための教育」を使命に、科学・政策・地域社会の行動を結びつける活動を展開しています。また、国際環境教育基金(FEE)のインドメンバーとして、ブルーフラッグ、グリーンキー、エコスクールなどの各種プログラムを実施しています。
インドでは2018年以降、政府主導のBEAMS(ビーチ美観・管理サービス)プロジェクトと連携しながらブルーフラッグの導入を進めてきました。その結果、現在では13のビーチが認証を取得しています。国際基準を導入することで、環境に配慮した持続可能なビーチ観光の必要性が広く認識され、地方自治体や地域社会の意識改革にもつながりました。現在では、ブルーフラッグは「憧れのプログラム」として、都市や地域、市民レベルにまで広がり、行政のガバナンス向上を促す存在となっています。
具体的な事例として、グジャラート州シヴラジプール・ビーチでは、外来種の侵入により劣化していた砂丘生態系の再生に取り組みました。ブルーフラッグ基準を契機に、行政、専門家、地域住民が連携し、環境教育を通じて共通のビジョンを形成しながら保全活動を推進しました。その結果、在来植生を伴う砂丘が再生し、現在も維持されています。この取組は、高額なインフラに依存するのではなく、地域の主体的な関与と継続的な努力によって自然環境を守る「自然に基づく解決策(Nature Based Solutions)」の有効性を示しています。
また、ケララ州カッパド・ビーチにおいても、植生の保全を通じて砂の流出を抑制するなど、自然の力を活用した取組が成果を上げています。これらの事例は全国のブルーフラッグ認証ビーチに共有され、生物多様性の保全や浸食対策の取組が各地で進められています。
さらに、ブルーフラッグは環境面にとどまらず、地域社会にも多面的な効果をもたらしています。女性自助グループがビーチ運営に参画し、雇用や収入機会を創出しているほか、漁業コミュニティ出身者がライフガードとして育成されるなど、技能向上と社会的包摂が進んでいます。こうした取組は、地域の主体性と誇りを育むとともに、ビーチを環境教育や文化活動の拠点とする「生きた学びの場」としての価値を高めています。
また、廃棄物管理や再生可能エネルギーの導入など、持続可能なインフラの整備も進められており、来訪者に対して環境配慮型の技術や行動を体験的に伝える役割も果たしています。加えて、安全対策の強化により、家族連れを含む多くの来訪者が安心して利用できる環境が整いつつあります。
一方で、課題も明確になっています。来訪者の増加による収容力の限界や、モンスーンや気候変動による浸食・災害リスクの高まり、さらには認証区域外における管理の難しさなどが挙げられます。今後は、ビーチ単体の管理から、沿岸域や観光地全体を視野に入れた包括的なマネジメントへの転換が求められます。
こうした課題に対応するため、インドでは政策連携の強化や科学的モニタリングの導入、さらにはAIの活用などを進めています。また、ブルーフラッグの取組は国内の基準策定や政策形成にも影響を与え、沿岸管理の質の向上に寄与しています。
最後に、ブルーフラッグは単なる環境認証ではなく、人と自然、地域と世界をつなぐ「グローバルなつながり」です。インドの「LiFE(環境のためのライフスタイル)」や、日本の「生きがい(IKIGAI)」といった価値観と結びつくことで、その意義はさらに深まります。
本日の共有が、アジア全体における持続可能な沿岸管理の発展につながることを期待しております。ありがとうございました。










